「圧搾空間(スクイージングルーム)」とは?総入れ歯専門医が教える、食べやすさの秘密

「圧搾空間(スクイージングルーム)」って何?
― 食べやすさを生み出す、歯の小さな魔法 ―
こんにちは。東京都武蔵野市の総入れ歯専門の澤田歯科医院 院長・澤田宏二です。
今日は少しマニアックな内容となりますが、実はとても大切な「噛むしくみ」のお話をします。
その名も――圧搾空間(あっさくくうかん)。
英語では “スクイージングルーム(Squeezing Room)” と呼ばれています。
食べ物を「押しつぶすための空間」
私たちの歯は、ただ上下でカチッと当たっているわけではありません。
よく見ると、奥歯のかみ合わせには「ほんの小さな隙間」があるのです。
その隙間こそが、食べ物をしっかり押しつぶすための空間=圧搾空間です。
レモンをギュッと絞るように、歯と歯の間で食べ物を“スクイーズ(絞る)”して、つぶし、舌の上に送る
――そんな働きをしているのです。
食べ物はどうやって舌の上に流れていくの?
奥歯で噛むとき、外側(ほっぺた側)と内側(舌側)の歯の山が上下の歯で当たります。
このとき、上下の歯の間に生まれるわずかな空間(隙間)が食べ物を「しっかりキャッチ」して、
ゆっくりと舌のほうへと押し流してくれるのです。
この自然な流れがあるおかげで、食べ物はほっぺたのほうに逃げず、舌の上にのって、
唾液と混ざりながらスムーズに飲み込むことができるのです。
「食べづらい入れ歯」は、流れができていないことも
入れ歯を作るとき、この圧搾空間を意識して設計しないと、食べ物が外側に逃げてしまい、
ほっぺた側に食べ物が溜まってしまうことがあります。
「いつまでも飲み込めない」「食べづらい」と感じる入れ歯は、この“流れ”ができていないことが
原因の一つかもしれません。
逆に、圧搾空間を考えた入れ歯では、食べ物が舌の上に自然に集まり、飲み込みやすく、
食事が楽になるのです。
神様が作った「噛むためのデザイン」
人間の歯は、見た目以上に繊細で、計算された形をしています。
食べるたびに、外と内の歯の山がちょうどよく当たって、食べ物をつぶしながら舌の方へ流す
――まるで「自然が作った噛むための機械」のようです。
この美しい構造に気づくと、「噛む」という行為がどれほど精密でありがたいものか、感じられますね。
澤田歯科医院の総義歯づくりにも活かしています
私は、総入れ歯(総義歯)づくりにおいても、この「圧搾空間」の考え方をとても大切にしています。
単に「ぴったり吸いつく」だけではなく、食べ物が自然に流れて飲み込みやすい設計を目指しているのです。
それが、入れ歯を「道具」ではなく、“生きる力を支えるパートナー”に変えてくれます。
まとめ
- 圧搾空間は、歯と歯の間にできる「食べ物を押しつぶすための隙間」
- 食べ物を舌の上に流し、飲み込みやすくする大切なしくみ
- 入れ歯にもこの構造を取り入れることで、自然で快適な噛み心地が生まれます
澤田院長より一言
私たちの口の中には、もともと「おいしく食べるための設計(デザイン)」が備わっています。
その知恵を生かした総入れ歯づくりで、「噛める幸せ」「食べる喜び」を取り戻していきましょう。
