なぜ入れ歯は“何度作っても合わない”のか
なぜ入れ歯は“何度作っても合わない”のか
「先生、もう何個目か分からないんです…」
初診の患者さんから、よく聞く言葉です。
・作り直しても痛い
・すぐ外れる
・噛めない
・しゃべりにくい
そして多くの方が、こう言われています。
「歯ぐきが痩せているから仕方ないですね」
「難しいお口ですね」
「慣れるしかありません」
その結果、患者さんは思います。
「自分の口が悪いんだ」
「もう入れ歯は合わないものなんだ」
でも、本当でしょうか。
入れ歯が合わない理由は、あなたの口ではありません
結論から言うと、
合わない原因の多くは“口”ではなく“作り方”にあります。
歯ぐきが痩せているから合わない。
難しい顎だから合わない。
確かにそういう説明は、分かりやすいです。
ですが、それは半分だけ正しく、半分は違います。
なぜなら――
入れ歯は、形を合わせれば合うものではないからです。
多くの入れ歯は「口を合わせにいっている」
一般的な入れ歯作りでは、
・この位置で噛ませる
・この高さにする
・この形に並べる
・この動きをさせる
つまり、
術者が“理想の口”を決めて、それに患者さんを合わせようとします。
ここに問題が起きます。
口は、部品ではありません。
筋肉があり、舌が動き、頬が働き、無意識のバランスで成り立っています。
そこへ外から決めた形を入れるとどうなるか。
身体はそれを
異物として排除しようとします。
外れる
痛む
噛めない
これは異常ではなく、
むしろ身体の正常な反応です。
本来は、身体が入れ歯を決めます
実は、入れ歯には逆の作り方があります。
術者が口をコントロールするのではなく、
身体の働きに決めてもらう方法です。
・舌の力
・頬の力
・飲み込む動き
・閉じる動き
これらが調和する位置に入れ歯が存在するとき、
人は「使っている」という感覚が消えます。
押さえなくても外れない
噛もうとしなくても噛める
意識しなくても話せる
つまり――
合う入れ歯は、頑張って使うものではありません。
気づいたら使えているものです。
あなたの口が悪かったわけではありません
何度作っても合わなかったのは、
あなたの歯ぐきのせいではありません。
あなたの顎が特別難しいからでもありません。
身体はずっと、
「この形は違う」と教え続けていただけです。
入れ歯は“合わせる装置”ではなく、
身体のバランスを写し取る装置です。
そこが一致したとき、
初めて「入れ歯が入っていることを忘れる感覚」が生まれます。
そして多くの患者さんが、最初にこう言います。
「初めて、自分のせいじゃなかったと分かりました」
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さいごに
入れ歯は、頑張って慣れるものだと思われがちです。
ですが本来、身体に合った入れ歯は、努力を必要としません。
人の身体はとても正直で、
合わないものには必ず違和感という形で教えてくれます。
そして、調和したときには、使っていることさえ忘れていきます。
もしこれまで何度作っても合わなかったとしても、
それは「あなたの口が悪い」からではありません。
合わなかった経験の分だけ、
身体はきちんと答えを持っています。
その声を邪魔せず、
身体が決めた形をそのまま写し取ること。
私たちが行っているのは、
入れ歯を作ることというより、
身体が本来持っているバランスを取り戻す手伝いなのかもしれません。
―― 澤田歯科医院
院長 澤田宏二
