なぜ下の総入れ歯は浮くのでしょうか?
「下の入れ歯が浮いてしまうんです。」
総入れ歯の患者さんから、最も多く聞く悩みのひとつです。
食事をすると動く。
会話をすると外れそうになる。
大きな口を開けると持ち上がってしまう。
そのたびに、
「もう総入れ歯だから仕方ない」
と諦めてしまう方も少なくありません。
しかし、本当に仕方ないことなのでしょうか?
上の総入れ歯と下の総入れ歯は全く違います
上の総入れ歯は、
広い口蓋(上あご)を利用できます。
そのため、
比較的安定を得やすい構造になっています。
一方、
下の総入れ歯には口蓋がありません。
支える面積も小さく、
さらに周囲には、
- 舌
- 唇
- 頬
があります。
つまり、
下の総入れ歯は常に動く筋肉に囲まれているのです。
入れ歯を押し出す力が存在します
例えば、
舌が少し動くだけでも、
下の総入れ歯には大きな力が加わります。
食事中。
会話中。
飲み込む時。
あくびをした時。
口の中では常に筋肉が働いています。
もし入れ歯の形がその動きと合っていなければ、
筋肉は入れ歯を押し出してしまいます。
すると、
浮く。
外れる。
痛い。
という現象が起こります。
歯ぐきが痩せていることだけが原因ではありません
患者さんの多くは、
「歯ぐきが痩せたから浮くんですよね」
とおっしゃいます。
確かにそれも一因です。
しかし、
歯ぐきがかなり痩せていても安定する方がいます。
反対に、
歯ぐきがしっかりしていても浮く方もいます。
つまり、
原因は歯ぐきだけではないのです。
私が見ているのは「動き」です
総入れ歯治療を始めた頃の私は、
歯ぐきとの適合ばかりを見ていました。
もっとピッタリ作れば良くなる。
もっと精密に作れば安定する。
そう考えていました。
もちろん、
それは大切なことです。
しかし、
多くの症例を経験する中で、
私は別のことに気づきました。
それは、
口の中には「動き」がある
ということです。
包み込みという考え方
下の総入れ歯を安定させるためには、
歯ぐきだけではなく、
頬や唇や舌との関係を考える必要があります。
私はこれを、
「包み込みの入れ歯」
と呼んでいます。
頬や唇や舌が、
入れ歯を押し出す存在ではなく、
支えてくれる存在になる。
そんな形を探していく考え方です。
浮かない入れ歯は偶然できるものではありません
口を開けても浮かない。
食事中も安定している。
話しやすい。
そんな総入れ歯は、
偶然できるわけではありません。
歯ぐきだけではなく、
頬や唇や舌の動きまで含めて考えることで、
初めて見えてくる世界があります。
「下の総入れ歯は浮くもの」と諦める前に
もし今、
下の総入れ歯が浮いて困っているなら、
それは単純に歯ぐきの問題ではないかもしれません。
口の中の動き。
頬や唇や舌との関係。
そこに原因が隠れていることがあります。
私は34年間の総入れ歯治療の中で、
そのことを何度も経験してきました。
だからこそ、
「下の総入れ歯は浮くもの」
と諦める前に、
別の見方があることを知っていただきたいと思っています。
総入れ歯専門 澤田歯科医院 院長 澤田宏二
