【質問】保険診療で満足できる総入れ歯ができる人について
【院長からの回答】
保険診療の範囲内でも、歯茎の状態や噛み合わせなど、お口の中の条件が良い患者さんの場合であれば、ほとんどの歯科医院で安定する総入れ歯を作ってもらえると思います。
お口の中の条件が良いと言うのを具体的にお話しすると、口の中の状態が、歯茎が痩せていない、歯がもともとあった箇所の骨に高さがある方を条件が良いと言っています。
口の中がこういった状態であれば、さほど難しくなく総入れ歯が安定します。
そしてもう1つの条件として、噛み方があります。
食べ物を食べるときに”タテ噛み”と、私が呼んでいる噛み方をする方の場合も、入れ歯の安定は良いと言えます。
このような”タテ噛み”の噛み方と対局にあるのは、奥歯ですりつぶす噛み方をする方です。すりつぶす噛み方を主にしている方は、入れ歯がどうしても横に揺れやすいのですが、”タテ噛み”をされている場合は、総入れ歯が左右に揺れにくいので、総入れ歯が安定しやすいワケです。
これらのお口の中の条件の良い方であれば、保険診療でも十分に満足できる総入れ歯ができるのです。
逆に言うと、歯茎が痩せている方、歯があった箇所の骨が下がっている方、そして、奥歯で食べ物をすりつぶす噛み方をする方の場合は、入れ歯が安定して、満足できる総入れ歯を作るのは非常に難しくなります。
当院では、こういった難しい条件の方々の総入れ歯を、高い技術と時間と手間をかけてお作りしています。
ところで、噛み方についてですが、”タテ噛み”に対して”すりつぶす噛み方”と説明しました。
前者は、欧米の食生活、つまり、パンや肉を食べる民族に多い噛み方です。
それに対して、後者は、我々日本人のように野菜や穀物を食べる民族に多い噛み方です。
この説明をした際に、こんな質問を頂きました。
「噛み方を”タテ噛み”に矯正できればシンプルな総入れ歯でも使えるのですか?」
答えは、現実的には難しいということになります。
これは、幼少の頃からの噛み方によって、その噛み方に最適な顎の骨格形成がなされているからです。
分かりやすいところで言えば、ご年配の方々の顎は、エラが張っていることが多いと思うのです。それは奥歯でものをすりつぶす噛み方が習慣化している結果なのです。
つまり、噛み方に合わせて骨格ができあがっているので、噛み方を変えるというのは現時的には無理と考えてもらっていいかと思います。
日本人は野菜や穀物を奥歯ですりつぶす食文化を持っているので、特にご年配の方々には、すりつぶす噛み方を総入れ歯に盛り込む必要があり、高い技術で時間と手間をかけて、良い総入れ歯を作る必要があることが多いわけです。