「まず仮の入れ歯を作りましょう」と言われた方へ ──「治療用義歯」とは何か

前に通っていた歯科医院で、
「本入れ歯の前に、まず仮の入れ歯を作りましょう」
と言われて、戸惑われていた方がいました。
「二組作るということですか?」
「そのぶん、費用も期間もかかるのではないか?」
「それは、どうしても必要なものなのでしょうか?」
そう思われて、当然です。
このときよく使われるのが「治療用義歯」という言葉です。
ただ、この言葉は、実は2つの違うものを指して使われています。
そして、どちらのことを言われているのかで、意味がまったく変わります。
今日は、その整理をしてみたいと思います。
東京・三鷹の澤田歯科医院、院長の澤田宏二です。総入れ歯づくり34年になります。
「治療用義歯」とは、本来こういうものです
新しい入れ歯を作るに先立って、治療の目的で、ある一定期間、装着する仮の入れ歯を「治療用義歯」といいます。
これが本来の意味です。
「治療用」という名前のとおり、治すためのものです。
では、どういうときに必要になるのか。
- 顎の位置(顎位)に異常があるとき ── 長期間、奥歯での噛み合わせがなかったり、ズレた噛み合わせや、低い噛み合わせに顎が慣れてしまった時など、正しい位置に戻してから、本入れ歯を作る必要があります
- 歯ぐきの粘膜に炎症などの異常があるとき ── まず、その状態を治さなければ、合う入れ歯は作れません
- 抜歯したあと、傷口が治るのを待つとき ── 歯ぐきの形が落ち着くまで、待つ期間が要ります
澤田歯科医院でも、必要なときは「治療用義歯」を使います
「治療用義歯」という言葉を使っていないので、やっていないように見えるかもしれません。
しかし、治療の内容的には同じことをしています。
3つのやり方があります。
1.いま使っている入れ歯を、修理して使えるようにする
抜歯したあと、傷口が治るのを待つあいだ。いま使っておられる入れ歯に歯を足して(増歯修理)、その期間を過ごしていただくことは多いです。
また、噛み合わせのズレなども、いま使っておられる入れ歯の噛み合わせを調整して、正しい位置に合わせてから本入れ歯づくりに移行します。
このような治療の時には、あえて「治療用義歯」とは言いません。
この治療法のメリットは、新しく作らずに済みますので、費用も期間も、少なく済みます。
2.いまの入れ歯が使えない場合は、仮の入れ歯をお作りする
いま使っておられる入れ歯が、修理しても使えない状態のこともあります。
患者さんが、今の入れ歯を「もう使いたくない」とおっしゃる場合も多いです。
その場合には、仮の入れ歯をお作りします。
それが「治療用義歯」の役目を果たします。
注)仮の入れ歯は、6か月以内を目安に、本入れ歯に移行するようにしています。
3.本入れ歯の前に、もう一組お作りする
粘膜に強い炎症があるとき、顎の位置に異常があり、そう簡単には、改善が見込めないとき。
症状を治すための入れ歯を、本入れ歯とは別にお作りします。
当院ではこれを【機能回復プラン】としてご用意しています。
これこそ、まさに本当の意味での「治療用義歯」です。
症状改善のために、これまで使っておられる入れ歯の、形と噛み合わせを、大きく修正・改善する必要がありますので、本入れ歯づくりに先立って、もう一組作るわけです。
澤田歯科医院では、治療に先立ち、検査・診断をして、 患者さんの状態に合った治療方針・治療計画をご提案しますので、「治療用義歯」をもう一組作る必要があるときには、事前にお話しするようにしています。
つまり、治療が必要な方には、治療用義歯にあたるものを使っています。
呼び方が違うだけです。
ところが ──「治療用義歯」には、もう一つの使い方があります
世の中には、「治療用義歯」という言葉を使う、もう一つの治療法があります。
それは、入れ歯の「外形」を決めるために使うというものです。
総入れ歯は、歯ぐきに乗っているだけではありません。
入れ歯の縁の形(入れ歯の大きさ) ── どこまで伸ばすか、どこで止めるか ── が、安定を決めます。
頬や唇、舌の動きを邪魔せず、しかも外れない。
その境目が「入れ歯の外形」です。
この外形を決めるために、次のような方法があります。
仮の入れ歯に、軟らかい材料(軟性裏装材)を敷く
↓
一定期間、患者さんに使っていただく
↓
すると、お口の動きによって、材料の形が自然に整う
↓
その形を写して、本入れ歯を作る
というような、治療の仕方です。
これは、「ダイナミック(動的)印象」と呼ばれる型どりの仕方です。
お口が動いている状態のかたちを模型に再現する方法、という意味です。
そして、このとき使う入れ歯を、「治療用義歯」と呼んでいることがあります。
この2つは、目的が違います
| 何のために | 治すもの | |
| 本来の治療用義歯 | 粘膜や顎の位置を治すため | お口の状態 |
| 外形を決めるための使い方 | 入れ歯のかたちを決めるため | 入れ歯の形 |
治すものが、お口の状態なのか、入れ歯の形なのか。 そこが違います。
本来の定義で言えば、「治療用義歯」は前者です。
後者は、入れ歯の製作工程のひとつであって、治療のための義歯ではありません。
同じ言葉が使われているので、混ざってしまうのです。
澤田歯科医院は、入れ歯の外形を最初から本入れ歯で決めています
澤田歯科医院の総入れ歯づくりでは、
「予想配列」で早い段階から形を確かめ、
「包み込みの総入れ歯」で唇・頬・舌との調和を、最初から設計に入れています。
院長が34年の経験を活かして、「予想配列」という手法を用いて、
入れ歯の外形を決めているので、後者のような、期間を置くやり方はしていません。
そして、前者のような、粘膜の炎症、噛み癖の改善などが必要な患者さんには、
これまでの入れ歯を修理したり、仮の入れ歯を作って、「治療用義歯」としているのです。
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どちらが良い、という話ではありません
ここは、はっきり書いておきます。
軟性裏層剤(柔らかい材料)を使って、時間をかけて、入れ歯の形を決めていく方法には、確かな利点があります。
患者さんの日常生活で柔らかい材料がお口に馴染むのを待ち、形を決めていく方法というのは、とても理にかなった考え方です。
私も実際にやってみたことがあります。
ただ、柔らかい材料で決まった形を、本入れ歯の硬い材料に置き換えるところが、 私には難しく感じられました。
柔らかい材料はクッションになり、沈み込んでお口に馴染みますが、硬い材料は沈み込みません。
同じ形に仕上げても、お口の中での当たり方が変わってきます。
そこをどう見込むか。この方法の要になるところだと思います。
そして、いま澤田歯科医院では、
「予想配列」という方法を用いて、患者さんの唇、頬、舌に調和した形を再現する
「包み込みの総入れ歯」という総入れ歯づくりをしていますので、
先ほどの柔らかい材料を使って時間をかけて、入れ歯の形を作る必要がなくなっているのです。
それによって、通院回数と期間が短くなり、
患者さんの負担を軽くすることができています。
どちらの進め方でも、良い総入れ歯はできます。
大事なのは、ご自分がどちらの説明を受けているのかを、分かっておくことだと思い、
それらを整理できるように、この記事を書いてみました。
「まず仮の入れ歯を」と言われた方へ ── 聞いておくとよいこと
説明を受けたとき、次のことを尋ねてみてください。
どちらの意味で言われているのかが、はっきりします。
1.それは、私の口の中に治すところがあるからですか。
それとも、入れ歯のかたちを決めるためですか。
2.二組ぶんの費用がかかりますか。
3.仮の入れ歯を使う期間は、どれくらいですか。
4.その期間のあいだ、食事はふつうにできますか。
「1」がいちばん大事です。
ここで「お口の粘膜に炎症があるので」「顎の位置を戻したいので」という答えが返ってくれば、それは本来の治療用義歯です。必要なものです。
「入れ歯のかたちを決めるため」という答えなら、それは製作工程の話です。
必要かどうかは、進め方の考え方によります。
どちらにしても、納得してから進めるのがいちばんです。
そうはいっても、自分の場合はどちらなのか分からない、という方も多いと思います。
まず、お電話でご相談しましょう
総入れ歯のご相談を、院長が直接お電話でお受けしています。
- 費用はかかりません
- 30分ほど
- 1日1名まで(事前にご予約ください)
「うちで治療してください」と勧めることはありません。
まずは、いまの状況を一緒に整理するところから始めましょう。
いま受けておられる説明の内容をうかがえば、それがどちらのことなのか、お伝えできます。
TEL 0422-52-0193
東京・三鷹の澤田歯科医院 院長 澤田宏二(東京都武蔵野市)
※ 当院の入れ歯治療はすべて自費診療です。健康保険は適用されません。
費用の詳細は[料金表]をご覧ください。
※ 主なリスク・注意点:すべての方が同じ結果になるわけではありません。
治療結果には個人差があります。
お口の状態によっては、本入れ歯の前に治療のための入れ歯が必要になる場合があります。
装着後、お口に慣れるまでに調整が必要になる場合があります。
顎の骨は年月とともに変化するため、定期的な調整や作り直しが
必要になることがあります。
