【質問】当院の総入れ歯作りの料金が高くなる理由
【院長からの回答】
当院の総入れ歯治療はその金額をお伝えすると、患者さんによっては保険診療とくらべて高く感じられる方もいると思います。
金属床などの高い材料を使わない場合でも料金が高くなるので、その理由が分からないと感じられるかもしれません。
そこで、なぜ、そのような料金になるのかをご説明します。
まず、当院でつくる総入れ歯は、すべて当院内でドクターが技工をして製作を行います。
つまり、一般の歯科医院のように技工師さんに外注をしていません。
このようにドクターが技工(総入れ歯づくり)をすることが、料金が割高になる まずはひとつ目の要因になります。
では、なぜ外注しないで院内で技工までやってしまうのか?
それには理由があります。
それは、現在の総入れ歯づくりの際の主流となっている噛み合わせの作り方と、当院が大半の患者さんのために提供している噛み合わせの作り方に大きな違いがあるからです。
その違いを分かりやすくなるように、上下の歯の噛み合わせの話をしておきたいと思います。
歯というのは、両サイドが高く、中央がえぐれた形をしています。
つまり、舌側と頬側が山でその間が溝のような形になっているわけです。
通常は、上下の歯は、上の歯の舌側の山が、下の歯の真ん中の溝にピタッとはまっている状態にあります。
この噛み合わせが、食べ物を咀嚼するときになると上下の歯が左右に動くことで、上の歯と下の歯の山同士が触れ合い、その間に上下の溝の空洞ができる感じになります。
この上下の歯の空洞に食べ物が収まると、次の動きで山と溝が再度触れるようにこすれていくことで食べ物をすりつぶして噛むことができます。
このすりつぶして噛む動作が、食べ物を美味しく感じるためは非常に重要なポイントになります。
なぜなら、山同士がピタッと触れていないと、隙間から食べ物が外に逃げてしまうためこのすりつぶしが十分にできなくなるからです。
この十分なすりつぶしを実現するためには、当然ながら顎を左右に動かしたときに、上下の歯の山同士がピタッと触れている状態になる総入れ歯を作る必要があります。
もちろん、顎を右に動かしても左に動かしても山同士がピタッと触れるように作る必要があります。
ところが、説明するのは簡単ですが、この状態を総入れ歯で実現しようとすると非常に細かい精度が要求され、この噛み合わせを再現するためには高度な技術が必要になります。
一方で、現在の総入れ歯の主流のかみ合わせ方は、上下の歯の山同士をピタッと触れさせる作り方はせず、内側の山だけを触れるように作り、外側、つまり頬側の山は少し浮いている感じでかみ合わせを作るようになっています。
そのため、山同士が触れるタイミングで隙間から食べ物が外に出てしまいます。
このような噛み合わせが主流になっている理由は、いろいろあるのですが、1つの理由にこのような作り方の方が総入れ歯の調整が容易になるというのがあります。
これが外注を受けてくださる技工師さんにとっては一般的になりますので、歯科が外注の際に、いくら「山同士がピタッと合う技工をしてくれ」と依頼してもちゃんと対応するのはとても難しいのです。
これが、当院が、技工師さんに外注を出さずに、院内で最後まで技工を行って総入れ歯を作っている理由であり治療費が割高に感じられる2つ目の要因になります。
もちろん、おいしく噛めるほどの噛み合わせは必要なのかという話もありますし、患者さんによってはそういった噛み合わせが必要でない場合もあります。
ところが、特にご年配の方に多いのですが、こういったすりつぶす噛み方をされている患者様の場合は、内側の山同士が触れるだけの技工で作られた総入れ歯ですと、入れ歯が安定しないことが多いです。
これは、患者さん本来の噛み方の違いによるもので、顎を左右に動かすことで総入れ歯がぐらぐらと動いてしまうのです。
何度も総入れ歯を作ってきたのにずっと不安定だった患者様が、当院でお作りした総入れ歯でようやく噛み合わせが安定したとおっしゃることがあるのはこのためなのです。
以上のことから、非常に高度な技工技術を駆使していることが当院の総入れ歯治療費の料金に反映されているとご理解いただけると幸いです。