総入れ歯は、何年使えるのか ── 6年目のメンテナンスで、していること
総入れ歯は、何年使えるのか ── 6年目のメンテナンスで、していること
「この入れ歯、あと何年くらいもちますか」
メンテナンスにお越しになった方から、よくいただくご質問です。
澤田歯科医院では、
だいたい12年から15年すると、作り直す方が出てきます。
今回は、6年お使いの方の総入れ歯を調整しました。作り直してはいません。
どこを、どう直したのか。そのままお話しします。
東京・三鷹の澤田歯科医院、院長の澤田宏二です。総入れ歯づくり34年になります。
6年前のこと
74歳の女性です。初めてお越しになったのは、令和2年11月でした。
「下の入れ歯が合わない」
「下の歯がグラグラで、抜けそうだ」
お使いだった下の部分入れ歯は、20年以上前に作られたものでした。バネをかけていた歯がダメになっては抜き、そのたびに入れ歯を修理する ── それを繰り返してこられた入れ歯でした。
このとき、下には前歯が3本と、左の小臼歯の根が1本、まだ残っていました。ただ、どれも大きく動いていました。
お粥くらいしか、食べられない状態でした。
食べることにかなり苦労をされていて、切羽詰まったお気持ちで、総入れ歯を作ってくれるところを探しておられました。インターネットで当院を見つけて、来院されました。
まず、2日で仮の入れ歯を
初診の翌日、下に残っていた歯を抜いて、型を取りました。
そのまた翌日、上下の仮の入れ歯をお入れしました。
初診から数えて、3日です。
このとき、上にはまだ歯が残っていましたので、上は残っている歯に合わせた仮の入れ歯です。
もちろん、ここで作ったのは、仮の入れ歯です
本入れ歯ではありません。ここは、はっきり申し上げておきます。
歯を抜いたあと、歯ぐきは形が変わっていきます。歯ぐきが落ち着くのを待たないと、本入れ歯は作れません。急いで作れるのは、あくまで「その間をしのぐための入れ歯」です。
しかし、急ぎの入れ歯と言っても、歯を抜いた部分以外の歯ぐき、頬や唇、舌と調和させることで、日常生活に困らない入れ歯となり、お食事ができるようになりました。
本入れ歯までの経緯
その後、上の歯をどうするか、患者さんと相談しながら、様子を見て、令和4年に上の前歯6本も抜きました。
本入れ歯を作るまで使えるように、仮の入れ歯に歯を足す修理をしています。
そして令和4年8月から、上下の総入れ歯づくりを始め、10月に完成しました。これが本入れ歯です。
以来、定期的にメンテナンスにお越しいただいています。
この方は4か月ごとのメンテナンスです。患者さんによって3か月から6か月、ご都合とお口の状態に合わせて、相談してメンテナンスの期間は決めています。
今回、行った調整 ── 2つ
初診から6年たった今回、お口の中を拝見して、2か所を直しました。
1.大きく口を開けたときに、下が浮いてくる
噛んでいるぶんには、問題がありません。ただ、大きく口を開けたときに、下の入れ歯がやや浮き上がる感じがありました。
お口の中では、頬と唇と舌が、たえず動いています。とくに大きく口を開けたとき、入れ歯のふちが口の動きとぶつかってしまうと、入れ歯が押し上げられて、浮き上がってしまいます。
そこで、今回、入れ歯のふち(辺縁)の形を、修正しました。その動きと調和する形に削り、調整することで、大きく開口しても、浮きにくくなりました。

下の総入れ歯。ふち(辺縁)の形を、今回削り調整しました
澤田歯科医院では、このお口の動きに調和した入れ歯の形づくり、調整の仕方を、「包み込みの総入れ歯」と言っています。
2.奥歯がすり減って、噛み合わせに隙間ができていた
人には、右利き、左利きがあるように、噛みやすい側があります。これは、入れ歯の噛み合わせの問題だけではなく、育ってくる過程での骨格の成長した形として、噛みやすい側があるのです。
この方は、主に右側で食べ物を噛んでおられます。そうすると、6年のあいだに、右側だけ奥歯の人工歯がすり減っていました。その分、上と下が当たらなくなっているところができていました。

右側。上下の奥歯のあいだに、隙間ができています

左側。こちらはしっかり噛んでいるのが分かります
隙間ができている右側の上の噛む面に、レジンを盛り足しました(咬合面再構成)。
すり減って足りなくなった分を、足したということです。これで、上と下がまた当たるようになり、しっかり食べ物を磨り潰せるようになります。

右側。噛む面を足したあと。上下が当たるようになりました
すり減るのは、よく噛めている証拠です
ここが、今回いちばんお伝えしたいところです。
入れ歯の奥歯がすり減っていると聞くと、悪いことが起きたように思われるかもしれません。
そうでは、ありません。
噛めていない入れ歯は、すり減りません。力が加わらないからです。
この患者さんは6年のあいだ、ご自分の歯のように入れ歯を使ってこられた。そのために、奥歯がすり減ってきたのです。

上の総入れ歯。6年お使いになった人工歯です
奥歯と言っても、すり減るのは5番目と6番目の歯です。いちばん食べ物を噛む場所だからです。
いちばん奥の7番目の大臼歯は、まだすり減っていません。だから、全体の噛み合わせのバランスが失われず、入れ歯の安定に問題は現時点で起こっていません。しかし、この7番目まですり減ってしまうと、そちら側の噛み合わせが低くなり、入れ歯のバランスが崩れ、安定しなくなって、使えなくなってしまうのです。
そうなる前に、すり減った分を足して、噛み合わせをもとに戻す。メンテナンスでいちばん大切なのは、ここなのです。
だから、作り直さずに使い続けられます
すり減った分を足す。ふちの形を直す。今回のメンテナンスで行った調整は、この2つだけです。新しく作ってはいません。
本入れ歯は、作って終わりではありません。使っているうちに、お口も、入れ歯も、少しずつ変わっていきます。その変化に合わせて手を入れていけば、同じ入れ歯を、ずっと長く使っていただけます。
「何年もちますか」への、私のお答え
年数そのものより、手を入れ続けられるかどうかで決まります。
澤田歯科医院では、高額な総入れ歯を作っている分、長く本入れ歯を使い続けて頂くことで、結果的に患者さんの経済的な負担を減らすことにつながると考えています。
そのために、メンテナンスでは2つを見ています。
・お口の動きに合っているか(ふちの形を調整する)
・噛み合わせが足りているか(しっかり噛めれば噛めるだけ歯はすり減るので、その分を補う)
安定した入れ歯を長く使えるようにして、美味しく食事をして、健康増進につなげて欲しいと努力しています。
まず、お電話でお話ししませんか
総入れ歯のご相談を、院長が直接お電話でお受けしています。
・費用はかかりません
・30分ほど
・1日1名まで(事前にご予約ください)
「うちで治療してください」と勧めることはありません。まずは、いまの状況を一緒に整理するところから始めましょう。
いまお使いの入れ歯を、直して使い続けられるかどうかも、お話をうかがえばおおよそお伝えできます。
澤田歯科医院 TEL 0422-52-0193
👉 料金表
東京・三鷹の澤田歯科医院 院長 澤田宏二(東京都武蔵野市)
※ 当院の入れ歯治療はすべて自費診療です。健康保険は適用されません。
【この方にかかった費用】いずれも当時の料金・税込(消費税10%)
令和2年11月 下顎の残存歯 抜歯+入れ歯修理 35,200円
令和2年11月 上下顎の仮の入れ歯 220,000円
令和4年 上顎前歯6本 抜歯 69,300円
令和4年 上の入れ歯の増歯修理 16,500円
令和4年8月 上下の総入れ歯(本入れ歯) 1,100,000円
令和8年9月 メンテナンス(辺縁の修正+咬合面の調整) 6,600円
※ 現在、上下の総入れ歯(スタンダードプラン)は 1,320,000円(税込)です。 このほかに初診、検査・診断の費用がかかります。 費用の詳細は[料金表]をご覧ください。
※ 主なリスク・注意点 ・すべての方が同じ結果になるわけではありません。治療結果には個人差があります。
・使用できる年数にも個人差があります。12年から15年というのは当院でお作りした入れ歯の 目安であって、すべての方にあてはまるものではありません。
・急いで作れるのは仮の入れ歯です。歯ぐきが落ち着いてから、あらためて本入れ歯を 作る必要があります。仮の入れ歯のまま長く使い続けることはできません。
・調整や修理で対応できるかどうかは、入れ歯とお口の状態によります。 状態によっては、作り直しが必要になる場合があります。
・装着後、お口に慣れるまでに調整が必要になる場合があります。
・顎の骨は年月とともに変化するため、定期的な調整や作り直しが必要になることが あります。
